IM(企業概要書)に記載される内容
IMに記載される内容
IMの中で最初に記載されることが多いのが、売却側企業の概要です。
売却を希望している企業の名称・所在地・資本金・株主構成・役員・従業員数などの会社の基本的な情報です。
買収側企業は、売却側企業の基本的な情報を知ったうえで、売却企業のより詳細な情報を見ていきます。
財務状況はどうなっているか
売却側企業の3年分の貸借対照表・損益計算書の情報を提供することが多いです。
もし、3月末決算の会社で2月時点のIMを作成する場合は、3月末時点での見込みの数字を入れておく方が好ましいです。
なぜならば、3月末に決算を終えてから11か月が経過しており、直近の財務状況が分かりづらいためです。
そして、財務状況に特別な事情がある年度がある場合は、その旨を記載しておきます。
ある年度だけ特別な事情から赤字になった場合や、ある年度のみ特別な事情から業績が上がり翌年度の決算が落ちているように見える場合などは、
特別な事情があったことを記載しておくと、買収側企業からみて分かりやすいためです。
このように、売却側企業は買収を考えている企業にとって必要な情報が何であるか、どのように記載したら分かりやすいかなどを考えながら、IMの作成をしましょう。
事業に関わる販売先等の関係者はどこか
事業内容はもちろん、買収側企業にその事業について深く知ってもらうため、重要な販売先・仕入先などのビジネス上の関係者に関しての情報を記載をします。
売却側企業が特定の業界や地域に対しての強みがある場合、その強みも記載しましょう。
また、客観的に分かりづらい専門用語などがある場合は、それについての簡単な説明も記載するとなお良いでしょう。
どのような組織編成か
買収側企業は会社の組織も買収するかどうかを決める際の参考にします。
売却側企業は、企業の組織図・株主構成の詳細・役員のプロフィールなどについて記載します。
ビジネスの遂行に必要な許認可はあるか
売却側企業のビジネスの遂行に必要な許認可や法規制がある場合、どういった許認可が必要なのか記載します。
買収側企業は買収を検討する際には、事業を引き継ぐためににどのような許認可が必要なのか、またその認可を得る方法など、
疑問点があれば、売却側企業と質疑応答を行い内容を把握しておきましょう。
固定資産は何があるか
本社ビルや工場などの固定資産に関して、所在地・広さなど記載します。
売り手企業が不動産を所有している場合は、買い手企業にとって大きな判断材料の一つとなり得ます
今後の事業計画について
3~5年程度の今後の事業計画を記載する売却側企業もあります。
今後の事業計画に関して記載する場合は、事実に基づいた実現可能な事業計画を記載しましょう。
実現不可能だと買い手に受け取られる計画だと、かえって買い手候補から信頼を失ってしまいます。
事業計画は、売却側企業の企業価値に関わるので、売却側企業は買収側企業が納得できるような事業計画を作成する必要があります。
買収側企業は、売却側企業からの事業計画が実現可能なのかどうかを検討します。
事業計画の内容が買収価格に大きく影響するような場合には、外部コンサルタントなどに依頼して評価してもらうことも一つの方法です。
*注意点*
売却側の企業がIMを作成する上で注意していただきたいことは、正確な情報・実現可能な根拠ある事業計画を記載することです。
重大な数字の誤りや、実現できる根拠がない事業計画は、これからの長いM&Aでの付き合いの関係上、弊害となるおそれがあります。
IMが不正確であったり不誠実であることがデューデリジェンス等のプロセスで判明すると、大きな問題となってしまいます。
IMを正式に開示する前には、売却側企業で必ず整合性の確認を実施することが重要です。
買収側企業は、IMをもとに売却側企業の詳細な分析を行いますが、疑問点などがあれば、
すぐに売却側企業に対して質疑応答や追加資料の依頼を行うなどして随時疑問点を解消しましょう。
IM(企業概要書)の作成時には必ず秘密保持契約を締結しましょう
IMの内容は企業にとって重要機密情報です。IMの作成を依頼するために売却側企業が自社で依頼するFAやM&A仲介会社であっても
秘密保持契約を締結することが大切です。
IM作成に必要な情報は、財務情報だけでなく、組織・人事に関する情報、KPIの推移、事業上の強みに関する資料など、経営の重要機密情報です。
この情報を万が一競合企業が手にするようなことがあれば、今後のビジネス展開に大きな影響を及ぼしかねません。
重要な機密情報をやり取りする際は、相手が自分たちの味方の立場であっても、秘密保持契約を締結しておくとよいでしょう。
また、IMの作成を依頼していることが知られてしまうことで、売却側企業の従業員が「自分は将来どうなるのだろう」などと不安に思うのは当然のことです。
M&Aが始まる前から、従業員にM&Aの件が知れ渡ることにより、従業員の離職リスクが高まり、売却を完了できない可能性もあります。
また、重要な取引先にとっても「M&A後はこれまでと同条件での取引が難しくなるのでは」と懸念してしまうかもしれません。
M&Aに関する情報は、クロージング前であれば会社の経営層など限られた人財のみで共有すべきです。
秘密保持契約を締結するなどして、情報漏えいを防止し、万が一の時に損害賠償を請求することができるようにしておくなど、体制を万全にしておきましょう。