IM(企業概要書)の作成目的

基礎知識
2023.10.27

IM(企業概要書について)

IMとは「企業概要書」のことで、Information Memorundomを省略したものです。
売却企業や事業の情報が詳細に記載された資料のことです

 

ノンネームシートとの違いは?

IMとノンネームシートは、企業についての概要書といった側面では同じ分類ですが、その内容は大きく異なります。
まず、ノンネームシートは秘密保持契約書締結前に作成される資料です。
秘密保持契約書が交わされる前に作られるノンネームシートでは、売却側は企業が特定されないように留意して、記載する情報は抽象的なものに留めることが必要です。
収益などの数字も幅を持たせて書くようにします。特に設立年月日などは企業の特定につながりやすいため注意しましょう。

一方で、IM(企業概要書)は秘密保持契約書締結後に作成される資料です。
買収側はノンネームシートを参考にし興味を持った場合、当該売却を希望している企業と秘密保持契約書を締結した後、IMを見せてもらいます。
IMは、買い手が買収するかどうかを決定するために参考とする資料ですので、情報量が多く、また、具体的で正確な内容で作成することが求められます。

 

 

IM(企業概要書)を作成する目的

IMは買収側にとって、M&Aを次のステップに進めるかどうかの意思決定を行う上で重要な情報となります。
買収側はIMの情報をもとに、気になる点をまとめたり簡易的なデューデリジェンス(買収前に行う買収対象企業の調査)を行い、
入札や売却側との交渉を行います。
その結果、基本的な条件が合意できれば、基本合意書を締結し、外部専門家を起用した詳細なデューデリジェンスを行います。

基本合意に進めるかどうかの意思決定を行うための資料がIM(企業概要書)ということになります。

また、売却側にとってIMの作成は、自社の状況を見つめなおす良い機会ともいえます。
IMを作成していく上で、自社の経営状態を数字で整理しなおすことで客観的な分析ができ、また自社の強みを認識する良い機会でもあります。
もし、結果としてM&Aが成立しなかったとしても、IMを作成したことによって、自社の状況を見つめなおし、
経営の改善点を見つける機会を得ることができたということですので、今後経営に良い影響を与える可能性が高いと考えられます。

IMに記載される内容

IMの中で最初に記載されることが多いのが、売却側企業の概要です。
売却を希望している企業の名称・所在地・資本金・株主構成・役員・従業員数などの会社の基本的な情報です。

買収側企業は、売却側企業の基本的な情報を知ったうえで、売却企業のより詳細な情報を見ていきます。

 

財務状況はどうなっているか

売却側企業の3年分の貸借対照表・損益計算書の情報を提供することが多いです。
もし、3月末決算の会社で2月時点のIMを作成する場合は、3月末時点での見込みの数字を入れておく方が好ましいです。
なぜならば、3月末に決算を終えてから、11か月が経過しているため直近の財務状況が分かりづらいためです。

そして、財務状況に特別な事情がある年度がある場合は、その旨を記載しておく方が良いでしょう。
ある年度だけ特別な事情から赤字になった場合や、ある年度のみ特別な事情から業績が上がったため翌年度の決算が落ちているように見える場合などは、
特別な事情があったことを記載しておくと、買収側企業からみて分かりやすいでしょう。

このように、売却側企業は買収を考えている企業にとって必要な情報が何であるかを考えて、IMの作成をすると良いでしょう。

 

事業に関わる販売先等の関係者はどこか

事業内容はもちろん、その事業について深く知ってもらうため、重要な販売先・仕入先などのビジネス上の関係者に関しての情報を記載をします。
売却側企業が特定の業界や地域に対しての強みがある場合、売却側企業が持つ強みも記載すると良いでしょう。

 

どのような組織編集か

買収側企業は会社の組織も買収するかどうかを決める際の参考にします。
売却側企業は、企業の組織図・株主構成の詳細・役員のプロフィールなどについて記載します。

 

ビジネスの遂行に必要な許認可はあるか

売却側企業のビジネスの遂行に必要な許認可や法規制がある場合、どういった許認可が必要なのか記載します。

買収側企業は買収を検討する際には、事業を引き継ぐためににどのような許認可が必要なのか疑問点があれば、
売却側企業と質疑応答を行うなどして、内容を把握しておきましょう。

 

固定資産は何があるか

本社ビルや工場などの固定資産に関して、所在地・広さなど記載します。
売り手企業が不動産を所有している場合は、買い手企業にとって大きな判断材料の一つとなり得ます。

 

今後の事業計画について

3~5年程度の今後の事業計画を記載する売却側企業もあります。

今後の事業計画に関して記載する場合は、事実に基づいた実現可能な事業計画を記載しましょう。
実現不可能だと買い手に受け取られる計画だと、かえって買い手候補から信頼を失ってしまいます。
事業計画は、売却側企業の企業価値に係わるので、売却側企業は買収側企業が納得できるような事業計画を作成すると良いでしょう。

買収側企業は、売却側企業からの事業計画が実現可能なのかどうかを検討します。
事業計画の内容が買収価格に大きく影響するような場合には、外部コンサルタントなどに依頼して評価してもらうことも一つの方法です。

 

*注意点*

売却側の企業がIMを作成する上で注意していただきたいことは、正確な情報・実現可能な根拠ある事業計画を記載することです。
重大な数字の誤りや、実現できる根拠がない事業計画は、これからの長いM&Aでの付き合いの関係上、弊害となるおそれがあります。
IMが不正確であったり不誠実であることがデューデリジェンス等のプロセスで判明すると、大きな問題となってしまいます。
IMを正式に開示する前には、売却側企業で必ず整合性の確認を実施することが重要です。

買収側企業は、IMをもとに売却側企業の詳細な分析を行いますが、疑問点などがあれば、
すぐに売却側企業に対して質疑応答や追加資料の依頼を行うなどして随時疑問点を解消しましょう。

 

 

最後に、IM(企業概要書)の作成時には必ず秘密保持契約を締結しましょう

IMの内容は企業にとって重要機密情報です。IMの作成を依頼するために売却側企業が自社で依頼するFAやM&A仲介会社であっても
秘密保持契約を締結することが大切です。

IM作成に必要な情報は、財務情報だけでなく、組織・人事に関する情報、KPIの推移、事業上の強みに関する資料など、経営の重要機密情報です。
この情報を万が一競合企業が手にするようなことがあれば、今後のビジネス展開に大きな影響を及ぼしかねません。

重要な機密情報をやり取りする際は、相手が自分たちの味方であっても、秘密保持契約を締結しておくとよいでしょう。

また、IMの作成を依頼していることが知られてしまうことで、売却側企業の従業員が「自分は将来どうなるのだろう」などと不安に思うのは当然のことです。
M&Aが始まる前から、従業員にM&Aの件が知れ渡ることにより、従業員の離職リスクが高まり、売却を完了できない可能性もあります。
また、重要な取引先にとっても「M&A後はこれまでと同条件での取引が難しくなるのでは」と懸念してしまうかもしれません。

M&Aに関する情報は、クロージング前であれば会社の経営層など限られた人財のみで共有すべきです。
秘密保持契約を締結するなどして、情報漏えいを防止し、万が一の時に損害賠償を請求することができるようにしておくなど、体制を万全にしておきましょう。

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