M&Aの流れ 徹底解説 – #06. クロージング

基礎知識
2023.10.26

3つ目の段階:最終契約段階

4.クロージング

クロージングの準備

M&Aスキームと契約内容(誓約事項や前提条件)に応じて、クロージングにむけた準備手続きを行います。

なお、当事者企業の国内売上高合計額が一定の水準を超える場合は、M&Aについて事前に公正取引委員会に届出を行うことが義務づけられており(独占禁止法10条2項)、届出後30日を経過するまではM&Aを実行することができません。
M&Aスキームの内容によっては届出対象とならない場合もあります。詳しくは公正取引委員会のガイドラインを参照してください。

①合併・会社分割・株式交換・株式移転の場合
M&Aの効力発生日までに売主側・買主側双方の株主総会でM&A契約についての承認決議を得る必要があります。ただし一定の場合は株主総会を省略できます。
M&Aに反対する株主は、所有する株式を公正な価格で買い取るように会社に請求できることになっており、これについての対応も求められます。また、債権者の異議への対応(債権者保護手続き)も必要です。

会社分割の場合は、「分割事業に主として従事していたのに買主側企業(新設企業)に労働契約が承継されない労働者」と「分割事業に主として従事していたわけではないのに承継される労働者」に異議申立ての期間を設け、労働者の意向に沿った対応をする必要があります。
期間設定については細かい規定があり、最終契約締結後からクロージングまでの間に行われることが多いです。

②事業譲渡の場合
合併などと同様に株主総会の承認と反対株主による株式買取請求への対応が求められます。ただし債権者保護手続きは不要です。
事業譲渡では、雇用契約の承継について労働組合(または労働者代表)および承継予定労働者と事前に協議した上で、労働者から個別に同意を得なければなりません。
これを行う時期についてはとくに取り決めはありませんが、クロージング準備期に行われるケースが多いと思われます。

③株式譲渡の場合

株式譲渡は株主との合意により行われるものであり、株式譲渡契約そのものに関して会社法上求められる手続きはとくにありません。

 

プレクロージングとクロージング

クロージング時に取り交わされる書類や必要な手続きは多岐にわたる場合があるため、クロージングの前日ないし数日前に双方の実務担当者が集まってチェックリストをもとに、必要な書類や手続きを確認するという段階を設けることがあります(プレクロージングと呼ばれます)。

クロージング当日には、対価の支払い・株式交付と株主名簿の名義書換(または株式等振替制度に基づく振替手続き)・重要物(例:実印)の引き渡し(支配者が変更される場合)・設立登記(新設合併・新設分割・株式移転の場合)などが行われます。

クロージング後もM&A契約などに基づき、クロージング後に実施が求められる手続きもあります。とくに事業譲渡の場合はクロージング後の手続きが多くなります。

M&Aは検討・準備に始まり、仲介業者の選定、相手先の検討、基礎情報の提示と分析、売却側・買収側の経営者による面談・交渉、基本合意を経て、仔細なデューデリジェンスと最終条件交渉を行い、クロージングにむかいます。

そして、クロージング後の売却側・買収側の経営統合作業、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を成功させることが、M&Aの目的です。

 

クロージング後のPMI

PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成立後の経営統合プロセス(新しい組織体制の下で当初企図した経営統合による、プラスの相乗効果を具現化するために、企業価値の向上と長期的成長を支えるマネジメントの仕組みを構築、推進するプロセスの全体)のことです。

M&Aが企業活動にもたらす成果の度合いは、このPMIによって決まるといっても過言ではありません。
PMIに関する検討は、おおまかにであれM&Aの準備段階から始めるのがM&A成立後の会社の発展にとって大切です。

例えば、短期的には組織、規定、定款、人事・労務、経営管理、経理・財務、コスト・原価などに関する見直しも有効です。
長期的には、現状分析をもとに中長期のビジョンや戦略・課題を設定し、進捗管理や定期的なモニタリングを実施し、1年後の目標を設定し達成を目指すのも一つの方法です。

 

以上が、おおまかなM&Aの流れです。M&Aの過程では非常に幅広い知識と細かな決断が要求されるため、M&A仲介業者などの専門家の支援が欠かせません。
M&Aの準備段階からクロージング後のPMIまでを見据え、経営統合後のさらなる企業の発展を一緒に考えていきましょう。

 

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